幾多いくら)” の例文
その小高こだか所々ところ/″\に、したから石段いしだんたゝんで、てららしいもんたかかまへたのが二三軒目げんめいた。平地ひらちかきめぐらして、點在てんざいしてゐるのは、幾多いくらもあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
幾多いくらも違ひは致しませんのに、にぎやかな方をいらつしやいましよ。私その代り四谷見附みつけの所までお送り申しますから」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いずれにせよ、自分の性質には思い切って人に逆らうことの出来る、ピンとしたところはないので、心では思ってもおこないに出すことの出来ない場合が幾多いくらもある。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
その小高い所々に、下から石段を畳んで、寺らしい門を高く構えたのが二三軒目に着いた。平地ひらちに垣をめぐらして、点在しているのは、幾多いくらもあった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれど、富むと云ふのはむさぼつてあつむるのではない、又貪つて聚めんけりや貨は得られんのではない、不正な手段をもちゐんでも、富む道は幾多いくらも有るぢやらう。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
翁さん姨さんの頼と有つて見れば、僕は不承知を言ふことの出来ない身分だから、唯々はいはいと言つて聞いてゐたけれど、みいさんは幾多いくらでも剛情を張つて差支さしつかへ無いのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)