巍峨ぎが)” の例文
その不落をほこる城楼も巍峨ぎがたる姿だが、さすが霊山の華岳かがくはもっと神々しい。仙掌せんしょうノ峰、雲台ノてらおのをならべたような石峰。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右手の岸には巍峨ぎがたる氷山が聳えている。左は駘蕩たいとうたる晩春初夏の景色、冷い風と生暖い温気とがこもごも河づらを撫でる。
旅の雲水空善くうぜんは頭の上を振り仰ぎました。巍峨ぎがたる路の果、本街道から木立と山の背に隠れて、ささやかな辻堂が、岩の上に建って居るのでした。
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ここは天然の要害で、四方を険しい峰に囲まれ、直ぐ後には山を控え、あたり一面は、巍峨ぎがたる岩石の山であった。
また時に遥かに連山の巍峨ぎがたるに接することあれど、すべて雲の峰なれば須臾しゅゆにして散逸するをつねとす。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
女仙外史の人の愛読耽翫たんがん所以ゆえんのもの、決して尠少せんしょうにあらずして、而して又実に一ぺん淋漓りんりたる筆墨ひつぼく巍峨ぎがたる結構を得る所以のもの、決して偶然にあらざるを見る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
湖海の渺茫びょうぼうたる、山嶽の巍峨ぎがたる、大空の無限なる、あるいは千軍万馬の曠野こうやに羅列せる、あるいは河漢星辰かかんせいしんの地平に垂接せるが如き、皆壮大ならざるはなし。勢力の多き者は雄渾なり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかしこれはむろんはぶかなくてはならぬ、なぜならば我々は農商務省の官衙かんが巍峨ぎがとしてそびえていたり、鉄管事件てっかんじけんの裁判があったりする八百八街によって昔の面影を想像することができない。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
つき当りの巍峨ぎがたる一峰を指して、案内僧がひたいの汗を押しぬぐった頃、もちょうど中天、真夏の暑さは昇りつめていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)