くずれ)” の例文
一体、ここはもと山の裾の温泉宿ゆやどの一廓であった、今も湯の谷という名が残っている。元治年間立山に山くずれがあって洪水でみずの時からはたとかなくなった。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのくずれが豊国へ入って、大廻りに舞台がかわると上野の見晴みはらし勢揃せいぞろいというのだ、それから二にん三人ずつ別れ別れに大門へ討入うちいりで、格子さきで胄首かぶとと見ると名乗なのりを上げた。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
引返ひっかえして壁のくずれを見ると、一団ひとかたまりおおいなる炎の形に破れた中は、おなじ枯野かれのの目もはるか彼方かなた幾百里いくひゃくりといふことを知らず、犇々ひしひし羽目はめを圧して、一体こゝにも五六十、神か、鬼か、怪しき人物。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)