岩畳がんじょう)” の例文
旧字:岩疊
階下へ降りてみると、門を開放った往来から見通しのその一間で、岩畳がんじょうにできた大きな餉台ちゃぶだいのような物を囲んで、三四人飯を食っていた。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
この建物は非常に古く、破風はふや、どっしりと瓦をのせた屋根や、大きな屋の棟や、岩畳がんじょうな入口は、かかる荘厳な住宅建築の典型的のものである。
「駒井さん、僕はこういう岩畳がんじょう身体からだをして美人を描いているのに、あんたは虫も殺さないような顔をしていながら、殺生せっしょうな武器を作るのですね」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
村内でも工面くめんのよい方で、としもまだ五十左右さう、がっしりした岩畳がんじょうの体格、濃い眉の下にいたじゃの目の様な二つの眼は鋭く見つめて容易に動かず
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
岩畳がんじょうな古い門に下ってガラスばりの六角燈籠。——その下をくぐって一足そのなかへ入ったとき、誰しもそこを「仲見世」の一部とたやすく自分にいえるものはないだろう。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
弟というのも岩畳がんじょうという程ではなかった。
丸の内 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
下駄突かけて、裏の方に廻って見ると、小山のすそを鬼のいわやの如くりぬいた物置がある。家は茅葺かやぶきながら岩畳がんじょうな構えで、一切の模様が岩倉いわくらと云う其姓にふさわしい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
骨組の岩畳がんじょうな二十七八の若者で、花色裏の盲縞めくらじまの着物に、同じ盲縞の羽織のえりれて、印譜散らしの渋い緞子どんすの裏、一本筋の幅の詰まった紺博多の帯に鉄鎖をからませて
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
なぜなら、かれらの子供の時分からみつけて来た吾妻橋は、デコデコの虹梁をもった、真っ黒な、岩畳がんじょうをきわめたものだったから。……みるからに鬱然たる存在だったから。……
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
ちげえねえ、俺ァ辰さんよか年の十も下だンべが、何糞なにくそッ若けもんに負けるもンかってやり出しても、第一いきがつゞかんからナ」と岩畳がんじょうづくりの与右衛門さんが相槌あいづちをうつ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
清国しんこくの津々浦々からのぼって来る和船帆前船の品川前から大川口へ碇泊ていはくして船頭船子ふなこをお客にしている船乗りの旅宿で、座敷の真中に赤毛布あかげっとを敷いて、けやき岩畳がんじょうな角火鉢を間に
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
岩畳がんじょうな古い門に下ったガラスばりの六角灯籠とうろう。——その下をくぐって一ト足そのなかへ入ったとき、誰しもそこを「仲見世」の一部とたやすくそう自分にいえるものはないだろう。
雷門以北 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)