尾鰭おびれ)” の例文
「あッ! いけない。海馬や鯨だったら、こうしてはいられない。いまに尾鰭おびれで一つあおられると、参ってしまう。こいつは剣呑けんのん剣呑……」
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
身長身幅より三四倍もある尾鰭おびれは黒いまだらの星のある薄絹うすぎぬ領布ひれを振り撒き拡げて、しばらくは身体も頭も見えない。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
尾鰭おびれがして、真黒まっくろにしてしまうのなどは、せっかくの美味おいしさを台なしにしてしまうものだ。いわば絶世ぜっせいの美人を見るに忍びない醜婦しゅうふにしてしまうことで、あまりに味気ない。
鮎の食い方 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
鯉は水際まで来ていて、糸を口にくわえたまま、ゆったりと尾鰭おびれを動かしていた。
又は折ふし海べに下り立つて、すなどらうと思ふ時も、海松房みるぶさほどなひげの垂れたおとがひをひたと砂につけて、ある程の水を一吸ひ吸へば、たひかつを尾鰭おびれをふるうて、ざはざはと口へ流れこんだ。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
頭は西洋かぶとのような形をし、胸及び腹のひれは、赤児の腕の先に羽がついたような怪異な恰好かっこうになっている。更に著しい特徴は、脊柱せきちゅうがずっと尾鰭おびれの真中をつき抜けて伸び出ていることである。
尾鰭おびれを動かしてずーっと沖へ
アイヌ神謡集 (新字新仮名) / 作者不詳(著)