しばら)” の例文
「やつとおやすみなすつた。かういふ小さいお子さん一人にでも随分手がかゝるんですから、これからしばらくの間お気の毒でございますね。」
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
何を云ッても取合わぬゆえ、お勢も仕方なく口をつぐんで、しばらく物思わし気に洋燈ランプ凝視みつめていたが、それでもまだ気に懸ると見えて、「慈母さん」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しばらく楽まされし貫一も、これが為に興冷きようさめて、にはかに重きかしらを花の前に支へつつ、又かのうれひを徐々に喚起よびおこさんと為つ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
猪余儀なく虎しばらとどまり待て我祖父のよろい来って戦うべしとて便所に至り宛転ころがりて糞を目まで塗り往きて虎に向うと、虎大いに閉口し我まさに雑小虫を食わざるは牙を惜しめばなり
着物を二枚ことづかつて来た事なぞは、口止めをされてゐるのでしばらく黙つてゐたが、何だかそれではおかみさんの前を偽つてゐるやうで変であつた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
奥さんはかうなるまでにも、一度しばらく別れてゐられたのださうであつた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)