小栗をぐり)” の例文
その天麩羅屋てんぷらやの、しかも蛤鍋はまなべ三錢さんせんふのをねらつて、小栗をぐり柳川やながは徳田とくだわたし……宙外君ちうぐわいくんくははつて、大擧たいきよして押上おしあがつた、春寒はるさむ午後ごごである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ある日小栗をぐり風葉氏の弟子分にあたる岡本霊華といふ小説家がひよつくり訪ねて来た。何だか一人ぽつちでこの世に生れて来たやうな、寂しい顔をしてゐる男だ。
もりにかけとはかぎらない。たとへば、小栗をぐりがあたりいもをすゝり、柳川やながはがはしらをつまみ、徳田とくだがあんかけをべる。おしやくなきがゆゑに、あへ世間せけんうらまない。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小説家の小栗をぐり風葉氏に男の児が産れた時、氏は色々と名前の詮索をした揚句「傑作」といふ字を選んだ。
「ゆうべは夜中よなかから、よくいてたよ——ちゝ、ちゝ——と……あきさびしいな——よし。其方そつちへやつときな。……ころすなよ。」小栗をぐりかたはらからをついて差覗さしのぞいた。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)