小才こさい)” の例文
こいつ、仲間にしては小才こさいもあり、あかぬけのした肌合はだあいもあるので、巧みに、お蝶の心をとらえ、よからぬ悪智を吹きこんでいる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今更子供の取消とりけしも出来ないので、困つた事をしたものだと、可愛かあいらしい顔をしかめてゐたが、仕合しあわせ小才こさいの利いた男が
「遠慮のないところを言うと、もう少し下るんだ。内容は甲乙ないけれど、印象が違う。吉川君は君も認めている通り小才こさいが利く。君は何方どっちかと言うと……」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
太夫元の藤六夫婦は相模さがみのもの、小才こさいの利いた番頭の清次の入れ智恵で、水心のある美女を二人雇い入れ、讃州志度の海女という触れ込みで、この見世物を始めたのでした。
それが馬鹿智慧と謂ふもんだ、馬鹿に小才こさいのあるのはまるつきりの馬鹿よりなほ不可いけない。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
上方者かみがたもんなんです、京都のみぞろというところに生れた奴なんです、が若い時分から博奕打ばくちうちの仲間入りをして諸方を流れて歩いた揚句に、本来やくざじゃあるが小才こさいく奴でして
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
周馬が小才こさいも骨折り損となり終ると同時に、一角も、やや張合いを失って、吾ながら少し大人気おとなげないとも思いなおしたらしい。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんな仕事には誂向あつらえむきに出来ている男だ、何か、ちょっとした危ない仕事がやってみたくてたまらないのだ、小才こさいが利いて、男ぶりもマンザラでないから、あれでなかなか色師いろしでな
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いや、悪い人間じゃないんですが、小才こさいが利く丈けに、軽薄なところがあります。現に安達君としのぎを削りながら、万一の用心の為めに、別の縁談を受けつけて引っ張っているんですから」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「あれだから憎まれずともよいのに人に憎まれるのだ。どうも小才こさいろうすやつほど不快なものはない」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金助といって小才こさいの利く折助。
「君は小才こさい相応そうおうく」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
浅慮者あさはかものめがッ。これでまず九仭きゅうじんこう一簣いっきに欠いてしもうたわ。思えば、きさまの如き無謀小才こさいなやつを大望の片腕とたのんだなどがすでに尊氏のあやまりだった。返す返すも残念な
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
豪快な性質たちで、いつも軍功帳の筆頭には坐るが、決して小才こさいには立ちまわらない、むしろふだんは眠たげに口を結んで、底光りのする眸を濃い眉毛の下に欝陶うっとうしそうに半眼にふさいでいるといった風だ。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)