小姑こじゅうと)” の例文
結婚後始めて小姑こじゅうとという意味を悟った彼は、せっかく悟った意味を、解釈のできないために持て余した。第三の責任者は藤井の叔父夫婦であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お千代はそれほど力になる話相手ではないが悪気わるぎのない親切な女であるから、よめ小姑こじゅうとの仲でも二人は仲よくしている。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
この三十すぎの小姑こじゅうとの口から描写される家の空気は、いろんな臆測おくそく歪曲わいきょくに満ちていたが、それだけに正三の頭脳に熱っぽくこびりつくものがあった。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
そんなのは、僧侶なんど、われらと、仏神の中を妨ぐる、しゅうとだ、小姑こじゅうとだ、受附だ、三太夫だ、邪魔ものである。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小姑こじゅうとに悩まされた嫁であったいねの母親は、男の子はあるが一人娘のいねにふたたび自分と同じ道を歩かせまいと永い間思いつめていた果ての手段であったにちがいない。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
お絹の口ぶりによると、弟よめがいつでも問題になるらしかった。そしてそれを言うのはお絹だった。弟は妻のために、お絹姉さんを、少し文句の多すぎる小姑こじゅうとだと思っていた。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その頃の社会部は、小姑こじゅうと沢山で随分悩まされたが、幸いにして部員に後の大阪放送部長煙山二郎君などがおり、素人の私が友人たちの後援でどうやら責を果たしていたわけである。
小姑こじゅうと根性というのか、蔭口、皮肉、殊に自分のお得意先をとられたくないようで、雑用ばかりさせるし、悪口ついでにうんとならべると、女の腐ったような、本社の御機嫌とりに忙しい
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
非違ひいもないのに、なぜ、わが殿は、さまでに、お弱気なのやら。……おれは、たまらぬ、ごうえる。まるで、しゅうと小姑こじゅうとみたいな悪公卿あくくげどもの、もやもやを、見ておられる上皇も上皇だ』
と、いつのまにか仲間入りしていた小姑こじゅうとたずねた。
万年青 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
小姑こじゅうともないに越したことはありませんわ」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いつまで小姑こじゅうとの地位を利用して人を苛虐いじめるんだという諷刺ふうしとも解釈された。最後に佐野さんのような人の所へ嫁に行けと云われたのがもっとも神経にさわった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しゅうとめが一人、小姑こじゅうとが、出戻でもどりと二人、女です——夫につかうる道も、第一、家風だ、と言って、水も私が、郊外の住居すまいですから、釣瓶つるべからまされます。野菜も切ります。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
僕の家なんか母と僕と二人きりで、小姑こじゅうと一人いるわけじゃないんだから、僕さえしっかりしていれば、誰も何とも言やしないよ。君は花でも作って、好きな本でも読んでいればいいさ。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
有頂天の小姑こじゅうと、あした死ぬる生命、お金ある宵はすなわち富者万燈の祭礼、一朝めざむれば、天井の板、わが家のそれにあらず、あやしげの青い壁紙に大、小、星のかたちの銀紙ちらしたる三円天国
喝采 (新字新仮名) / 太宰治(著)
しゅうとめか、しゅうとか、小姑こじゅうとか、他人か、縁者、友だちか。何でも構う事はねえだの。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ありきたりの事で、亭主が三度かわった事だの、しゅうと小姑こじゅうといじめられた事だの、井戸川へ身を投げようとした事だの、最後に、浅間山の噴火口に立って、奥能登の故郷の方に向って手を合わせて
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)