小半刻こはんとき)” の例文
そこから湊橋みなとばしまで、辿り着くのに小半刻こはんときかかりましたが、結局、銭形栞を辿って、南新堀の廻船間屋浪花屋なにわやの前に立っていたのでした。
それが町角へ消えてから小半刻こはんときもたったか。麹町こうじまち三番町、百五十石小普請こぶしん入りの旗本土屋多門つちやたもん方の表門を、ドンドンと乱打する者がある。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それから小半刻こはんときほど後。老公の「影の者」を乗せて、ふかく内を秘した塗りの乗輿じょうよは、大勢の旅装した家臣に守られて門を出た。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
歩いて小半刻こはんとき。少し風立ってきたし、雲がひろがっているのに、気温の高さは少しも変らず、ゆきついたときには、すっかり汗になっていた。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それから、小半刻こはんときばかりたったのちに、一人の背の高い男が、浜辺につどった土民たちの中で、身を震わせていた。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
裏二階の人殺しがほんとうの油差しの男に発見されたのは、それから小半刻こはんときの後であった。
半七捕物帳:14 山祝いの夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あれやこれやで小半刻こはんとき。行列がようやくまた動き出す。
かくして、時を消すことおよそ小半刻こはんとき——。
すしを喰べて小半刻こはんときも経ちましたかしら、しばらくはそれでも我慢している様子でしたが、とうていたまらなくなったとみえて、地べたを
また小半刻こはんときもかかって、鄭がこれをも、包んで出すと、今度は豚の軟骨ばかりを十斤、同様に切れと魯達が命じた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神田連雀町の裏、湯灌場買い津賀閑山の古道具店へ、一人の侍がはいって来たのは、小半刻こはんときまえのことである。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それから、小半刻こはんときばかりののちに、女はどうやら精気を取りもどしたらしい。岩城の中の一室で三人の姉弟に取り巻かれて、いまや彼女は、薔薇ばら色のうねりをほおに立てつつあるのだ。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それから小半刻こはんとき(一時間ほど)、上野の鐘が、霧にれて、びっくりするほど近く聴えました。その捨て鐘がき終った頃。
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
何の薬を求めたのか、本町通りの薬種問屋をでた編笠の侍は、そのままスタスタと大通りへ向ったが、フイと道をかえて、横丁の刀研屋かたなとぎやへ入り、そこの店さきで、また小半刻こはんときほど話していた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それからざつと小半刻こはんとき、ホロ苦い酒を呑まされ乍ら、八五郎は散々口説かれました。
すぐといっても、それから小半刻こはんときはかかった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小半刻こはんとき愚痴を聴きましたが、その時お琴さんの言うには、父親の三郎兵衛さんは、身体が弱い上に無類の弱気で、まとまった仕事も出来なかったが、お嬢さんが浅田屋への申しわけに
それから小半刻こはんときほど後だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれから小半刻こはんときも経ったでしょう。