小冠者こかんじゃ)” の例文
路傍みちばたの子供に菓子などを与えながら行くものもある。途中で一行におくれて、また一目散に馬を飛ばす十六、七歳の小冠者こかんじゃもある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
見うければ、まだ、どこやら乳くさい小冠者こかんじゃ。生意気ざかりという頃だ。しかし、御家憲にそむくのみか、武家奉公しながら、武道を
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「聞けば聞くほど未練な小冠者こかんじゃ! 磔柱はりつけに掛けるも槍のけがれ! よいわ、許してやるほどに、芳江を連れて立ち去りおろう!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
身を一室に潜めて、まずその来客をうかがえば、料らざりき紅顔の可憐児、二十歳はたちに満たざる美少ならんとは。這奴しゃ小冠者こかんじゃ何程の事あらん。さはあれ従者に勇士の相あり。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おお帰ったか小冠者こかんじゃ
蒲生鶴千代 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あの小冠者こかんじゃを、いつまで籠の鳥の質子ちしと思うていると間違いまするぞ。今川家のひさしに巣喰うて満足しておる燕雀えんじゃくではおざらぬ。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「敵は小冠者こかんじゃただ一人じゃ。引っ包んで打って取れ!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
男も、まだ十七、八歳の小冠者こかんじゃだった。秘密のさざめごとを、人に聞かれたかと、恥じるように、顔をあからめて振りかえった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「でも、まだ十六歳の小冠者こかんじゃが、どうして、逃げおおせましょう。……いたましいことでございます」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの時の小冠者こかんじゃ頼朝が、わしら兄弟の手を取って、加勢を欣んだ顔つきは、今に眼に見えておるわ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この上はただ一弾をあの馬印の下にある秀吉に報わんと身を伏せていたものだ。汝、まだ年ばえも未熟な小冠者こかんじゃ、半助が討ち取る相手には足らん。——退けッ。邪魔するな
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おいおい、東国の小冠者こかんじゃ。おぬしは、ほんとに、忠平公のお館へ行くのか」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとまた誰か、陣幕とばりの外へ来てたたずんだ気配である。五、六名の武者らしかった。しかし内へ入って来たのは、ただ一人の小冠者こかんじゃの影であった。遠くにかしこまって、手をつかえている。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義経よしつねはもろ肌を脱いで、小冠者こかんじゃに、背なかのきゅうをすえさせていた。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小冠者こかんじゃ。そちはわしを見て逃げたな。わしを知っているか」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つい近頃、子供らの傅人もりとに抱えられたという小冠者こかんじゃである。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
傅役もりやく小冠者こかんじゃにあずけて行った。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小冠者こかんじゃおもてを上げろ」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小冠者こかんじゃっ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)