封建ほうけん)” の例文
甥は何と思って清の自慢を聞いていたか分らぬ。ただ清は昔風むかしふうの女だから、自分とおれの関係を封建ほうけん時代の主従しゅじゅうのように考えていた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わが封建ほうけんの時代、百万石の大藩にとなりして一万石の大名あるも、大名はすなわち大名にしてごうゆずるところなかりしも、畢竟ひっきょう瘠我慢のしからしむるところにして、また事柄ことがらは異なれども
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ただし大阪は今日でも婚礼こんれい家柄いえがらや資産や格式などを云々うんぬんすること東京以上であり元来町人の見識の高い土地であるから封建ほうけんの世の風習は思いやられる従って旧家の令嬢れいじょうとしての衿恃きょうじ
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
地方ちはうでも其界隈そのかいわいは、封建ほうけんころきはめてふうわる士町さむらひまちで、妙齡めうれい婦人ふじん此處こゝ連込つれこまれたもの、また通懸とほりかゝつたもの、して腰元妾奉公こしもとめかけぼうこうになどつたもののきてかへつたためしはない、とあとでいた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
先生の剣道は封建ほうけん時代の剣客けんかくまさるとも劣らなかつたであらう。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
失礼ながら時代後れだとも思いました。封建ほうけん時代の人間の団隊のようにも考えました。しかしそう考えた私はついに一種の淋しさを脱却だっきゃくする訳に行かなかったのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)