寸々ずたずた)” の例文
胸糞が悪くなつたから新聞を寸々ずたずたに引き裂かうとしたが、まア/\と一頁を返して見ると初め気が付かなかつた新刊紹介と云ふ欄がある。
と言って神尾主膳は、鐚の油断している手から大事の短冊をもぎ取って、寸々ずたずたに引裂いて火鉢の中へくべてしまい
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
乞食僧はその年紀とし三十四五なるべし。寸々ずたずたに裂けたる鼠の法衣ころもを結び合せ、つなぎ懸けて、辛うじてこれをまとえり。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頭おのおの一槽に入れて呑み酔うてねぶりけるを、尊はかせる十握とつかつるぎをぬきて寸々ずたずたに切りつ。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
目に涙をいっぱいためながらつめの先で寸々ずたずたに切りさいなんでいる自分を見いだしたりした。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
寸々ずたずたに引き切っても、首はなお残りて腹に入りついに人を殺す(とはよくよく尻穴に執心深い奴で、水に棲むてふことわりがないばかり、黒井将軍がしらされたトウシ蛇たる事疑いを容れず)
此処ここに六尺、彼処かしこに二尺、三尺、五尺、七尺、一尺、五寸になり、一分になり、寸々ずたずたに切り刻まれ候が、身体からだの黒き、足の赤き、切れめ切れめに酒気を帯びて、一つづつうごめくを見申し候。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
二階のと、三階の燈と、店の燈と、街路の燈と、あおに、萌黄もえぎに、くれないに、寸隙すきまなくちりばめられた、あやの幕ぞと見る程に、八重に往来ゆきかう人影に、たちまち寸々ずたずたと引分けられ、さらさらと風に連れて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)