容物いれもの)” の例文
夕方、会社から帰って来ると、台所の隅に仕出し屋のおかもちや、洋食屋の容物いれものなどが置いてあるのを、私はしばしば見ることがありました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それが済むと早速さっそく調理です。るものは大してありませんが、それぞれのけだものに頃合いの大きさに切ったり、分けて容物いれものに入れたりするのが大変です。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いまでも雀ののあたりの黒いのはこのとき墨の容物いれものを投げた、墨が垂れてついたもので、羽にぽつ/\と、黒い斑点のあるのは、墨の散つてついたのだといふことです。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
随分買ってやったものですが、何しろ硝子の容物いれものでしょう、じきに死んでしまうので、それきり一切金魚は止めましたが、ここに池を掘ってやりゃあ、そんなこともありますまい。
古井戸 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
瓜とお茄子とを少しばかり切つて小さい容物いれものへ入れたのへ小楊枝を添へて出した。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
おそらくあんな古典的な食物はない。お豆腐をこの容物いれものへ入れてわたしの丸い手がこれを提げた姿を気狂いのお京さんに見せてやろう。そしたらお京さんはひょっとしたら悦ぶかも知れない。
豆腐買い (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
型のごとく、青竹につるした白張の提灯ちやうちん、紅白の造花の蓮華れんげ、紙に貼付はりつけた菓子、すゞめの巣さながらの藁細工わらざいく容物いれものに盛つた野だんご、ピカピカみがきたてた真鍮しんちゆう燭台しよくだい、それから、大きな朱傘をさゝせた
野の哄笑 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
そして、紙入を出して、その中から、小さい錫の容物いれものを取出した。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
水の容物いれものを持たしたら、すっかりこぼしてしまいますわ。
箱と言へば直ぐにあの四角い容物いれものを考へ出す。
ごりがん (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
あらまあ! みんな こんな容物いれものに入れられちやつた