客気かっき)” の例文
旧字:客氣
そのうえ彼女は、クリストフのおかしな客気かっきや、乱暴や、架空的な気分などを見て、彼があまり平衡のとれた人間ではないと思っていた。
なに事をなすにも感情をまじえることは危険である。むろん感情と一口に言っても高尚こうしょうな感情もあるが、言うまでもなく今述べる感情は一時の客気かっきである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
切れといえばすぐにも切って見せると実際考えていた程、客気かっきはやっていた頃であるから、此処ここ迄来たのをさいわいに五郎の英霊を弔ってやろうと立ち寄ったのであった。
木曽駒と甲斐駒 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
この人のピアノに、若輩らしいところも、客気かっきらしいものもないのは、恐らくそのためでもあろうか。
俗人はその時その場合に書いた経験が一番正しいと思うが、大間違である。刻下こっかの事情と云うものは、転瞬てんしゅん客気かっきに駆られて、とんでもない誤謬ごびゅうを伝え勝ちのものである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ややもすればはやり勝ちな、一党の客気かっき控制こうせいして、おもむろに機の熟するのを待っただけでも、並大抵なみたいていな骨折りではない。しかも讐家しゅうかの放った細作さいさくは、絶えず彼の身辺をうかがっている。
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これをどうするかというに、少年客気かっきの人は侵略論を唱えるそうである。そういう人達の議論はどうかというと、まず個人の上には道徳はよほど進んだが、国際的道徳は少しも進まない。
東亜の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
酒を酌みながら、共に、青年客気かっきの夢に酔い、平安の都を、眼下に見て
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『文選』を耽読していたのと、どうもへんに山や石のついた字を使わないと、気分があらわれないように思った年少客気かっきの致すところと相俟って、こんな文章となってしまった。
木曽駒と甲斐駒 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)