宗盛むねもり)” の例文
一寸見廻しただけでも、長男重盛しげもりは、内大臣ないだいじん左大将さだいしょう、次男宗盛むねもりは、中納言ちゅうなごん右大将、三男知盛とももり三位さんみの中将、孫の維盛これもり四位しいの少将といった具合である。
宗盛むねもり〕清盛の次男(一書には三男とも)。前内大臣、内大臣おおいの殿と呼ばれている。一門の総大将。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜陰やいん森中もりなかに、鬼火おにびの燃えるかなえの中に熱湯ねっとうをたぎらせて、宗盛むねもりに似せてつくったわら人形をました。悪僧らはあらゆる悪鬼の名を呼んで、咒文じゅもんを唱えつつかなえのまわりをまわりました。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
男は仕方なしに口をつぐんだ。女も留ったまま動かない。まだ白状しない気かと云う眼つきをして小野さんを見ている。宗盛むねもりと云う人は刀を突きつけられてさえ腹を切らなかったと云う。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
相国の嫡子ちゃくしの小松重盛しげもりが左大将に、次男の宗盛むねもりが右大将に昇官して、徳大寺、花山院の諸卿をも超え、自分の上にも坐ったということが、何としても新大納言成親なりちかには
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしののろいをいれよ! (岩かどに突立つ。烈風蓬髪ほうはつを吹く。俊寛両手を天に伸ばす)わしはあらゆる悪鬼の名によって呪うたぞ! 清盛きよもりは火に焼けて死ね。宗盛むねもりの首はきゅうせられよ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
その癖やり出すと胃弱の癖にいやに熱心だ。後架こうかの中で謡をうたって、近所で後架先生こうかせんせい渾名あだなをつけられているにも関せず一向いっこう平気なもので、やはりこれはたいら宗盛むねもりにてそうろうを繰返している。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「実は、わしは各々方の気を引いてみたまでの事じゃ、わし自身は、今度の戦で立派に討死をするつもりで、二度と生きて都の土は踏むつもりはないと、宗盛むねもり卿にも申し上げておいたのじゃよ」
どうじゃ、何とみらるる、平家の暴状、しゃくではおざらぬか、忌々いまいましゅうは思われぬか、小松重盛しげもりを左大将に、これは、まあ我慢もなるとして、その次男坊の宗盛むねもり——木偶でくかんむりじゃ——猿にくつじゃ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あなたは成親殿なりちかどの宗盛むねもり左大将さだいしょうの位を争ったのを知っていますね。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「そうです。……ために、父の兵衛様は、人に顔向けができないといって、門を閉じておられましたが、近ごろ、沙汰するところによると、宗盛むねもり公から、死を賜わって、自害されたという話……」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)