“安座(あんざ)” の例文
もうこれで何も手落ちはないと思った五助は「松野様、お頼み申します」と言って、安座(あんざ)して肌(はだ)をくつろげた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
述(のべ)ければ先々緩(ゆる)りと安座(あんざ)して火に煖(あた)り給へといふ吉兵衞は世にも有難(ありがた)く思ひ火に煖(あた)れば今まで氷たる衣類(いるゐ)の雪も解(とけ)て髮(かみ)よりは雫(しづく)滴(したゝ)り衣服は絞(しぼ)るが如くなれば彼(かの)男もこれを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
だから極楽に生まれ、浄土へ行っても、自分独りが蓮華(はす)の台(うてな)に安座(あんざ)して、迦陵頻伽(かりょうびんが)の妙(たえ)なる声をききつつ、百味(み)の飲食(おんじき)に舌鼓を打って遊んでいるのでは決してありません。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
矜羯羅が柔和で立像、制吒迦が岩へ「踏み下げ」て忿怒(ふんぬ)の相、不動の本体は安座(あんざ)であって、片手が剣、片手が縛縄(ばくなわ)、天地眼(てんちがん)で、岩がある。岩の中央に滝、すなわち水の形を示している。
ギリギリと眼を釣り上げた昌秋は左手に提(ひっさ)げた延寿国資(えんじゅくにすけ)の大刀をガラリと畳の上に取落した。仏壇の前にドッカリと安座(あんざ)を掻いて、両手を前に突いた。肩で呼吸をしながら与一をかえりみた。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)