婆様ばあさん)” の例文
旧字:婆樣
「そこでの、黒瀬の婆様ばあさんを葬ってやろうと思って用意をしたお棺はね、ちと道具に使用処つかひどころがある、後でここへ持たしてお寄来よこし。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それを羨まし気に見ながら、同年輩おないどしの、見悄みすぼらしいなりをした、洗晒しの白手拭をかぶつた小娘が、大時計の下に腰掛けてゐる、目のシヨボ/\した婆様ばあさんの膝に凭れてゐた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
まづ最初に小さい風情ふぜいある渓橋、そのほとりに終日動いて居る水車、婆様ばあさん繰車いとぐるまを回しながら片手間に商売をして居る駄菓子屋、養蚕やうさんの板籠を山のごとく積み重ねた間口の広い家
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
と云いながら婆様ばあさんは、手に持った果物の籠を見せました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
照「なにお嬢様どころではないお婆様ばあさんだよ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
へい、あの婆様ばあさんはどこへ行ったか居りません。「そうだろう。彼奴あいつもしたたか者だ。お藤を誘拐かどわかして行ったに違いない。あのはまだ小児こどもだ。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何、何、おらあ、今年はもう七十五になっての、耳がうといに依って大きな声で謂わっしゃい。」「こりゃ大難だ。婆様ばあさんあのの。」「あいあい。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お丹は脈を伺いて、「ああ失策しまった。」と叫びしが、気を変えて冷笑あざわらい、「おい婆様ばあさん、お前の口に合うように料理をしたばかりに、とうとうこのを殺したよ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時々、あの辺で今まで見た事の無い婆様ばあさんに逢うものがございますが、何でも安達あだちが原の一ツ婆々ばばという、それはそれは凄い人体にんていだそうで、これは多分山猫の妖精ばけものだろうという風説うわさでな。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)