妄執まうしふ)” の例文
『二年前生捕られて散々なぶりものにされた上、役人に引渡されたうらみをべ、此の妄執まうしふを晴らすため、成瀬屋の者を一人々々、殘らず殺してやる』
はうむりて修羅しゆら妄執まうしふはらし申さんとて千住小塚原こづかはらの御仕置場へ到り非人ひにんの小屋へ立寄たちよりちと御頼み申度ことありてまゐりたり昨日御仕置になりたる武州幸手宿富右衞門のくび
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これ立ちかれ倒る、されどなほ妄執まうしふの光をらさず、そのもとにておのおの顏を變へたり 一二一—一二三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
いつかはまたもっと手ひどく仇を受けるぢゃ、この身終って次のしゃうまで、その妄執まうしふは絶えぬのぢゃ。つひには共に修羅しゅらに入り闘諍とうさうしばらくもひまはないぢゃ。必らずともにさやうのたくみはならぬぞや。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
妄執まうしふ」の色褪せにたり
ソネット (旧字旧仮名) / ステファヌ・マラルメ(著)
色相界しきさうかい妄執まうしふ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
自分の本當の伜に、親殺しの疑ひをかけるのは、容易ならぬ妄執まうしふで、十手捕繩の手前を忘れて、その恐ろしい疑ひをほぐしてやる氣になつたのでせう。