奇特きとく)” の例文
「十三囘忌くわいき、はあ、大分だいぶひさしいあとの佛樣ほとけさまを、あのてあひには猶更なほさら奇特きとくことでござります。」と手拭てぬぐひつかんだを、むねいてかたむいて
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
生涯かかって人が見ておらないときに、後世に事業を遺そうというところの奇特きとくの心より、二人の兄弟はこの大事業をなしました。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
この暑さにえりのグタグタになるほど汗を垂らしてまで諸君のために有益な話をしなければ今晩眠られないというほど奇特きとくな心掛は実のところありません。
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
めずらしく智深は奇特きとくな合掌をして、うろ覚えなおきょうをとなえた。それを見て、九紋龍もそばからいう。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
是についてさらに思い合わす一事例は、愛知県の東北隅、三州北設楽きたしだらの山村に、近い頃まで行われていた霜月神楽しもつきかぐらの中に、シラ山と称する奇特きとくなる行事があった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この志一上人はもとより邪天道法成就の人なる上、近頃鎌倉にて諸人奇特きとくおもいをなし、帰依きえ浅からざる上、畠山入道はたけやまにゅうどう諸事深く信仰頼入たのみいりて、関東にても不思議ども現じける人なり」
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「なるほど、奇特きとくなことだ。いまに、その人がやって来るかもしれない……」
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「それは貴公にはめずらしい御奇特きとくのことだな。」と、神南は笑った。
妖婆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
御物語おんものがたり奇特きとくさふらふ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
「おめづらしい、奇特きとくことでござります。いづれ旦那筋だんなすぢのでござりませう。」
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
奇特きとくなことだ。ありがたく貰おう。どれ見せい」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)