大都たいと)” の例文
黄塵くわうぢん濛々そう/\々として、日光さへばむで見える大都たいとの空に、是が二百まんの人間を活動させる原動げんどう力かと思はれる煤煙はいえんが毒々しくツ黒に噴出し
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
春の大都たいとのけしきは、ビルディングの屋上から見ると、まるで金粉をまいたよう、その美しさというものはありません。
九つの鍵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
とても帰られなくなりて今欧洲の大都たいとに遊ぶ人の心の如くに日本を呪詛じゅそせしものと存候このつぎ御来遊のせつは御一所に奈良へ出かけたきものに候さいよりよろしく 匆々
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あたらしく世帶しよたいつて、あたらしい仕事しごとはじめるひとに、ありちな急忙せはしなさと、自分達じぶんたちつゝ大都たいと空氣くうきの、日夜にちやはげしく震盪しんたうする刺戟しげきとにられて、何事なにごとをもじつかんがへるひまもなく
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つまり遊歴の八卦見はっけみ道者と化けすましたもので、宿を立ち出て、ほどなく、南大門にさしかかって見れば、さすが河北第一の大都たいと紫金しきんの瓦、鼓楼ころうの旗のぼり、万戸の人煙は、春のかすみを思わせて
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)