大八車だいはちぐるま)” の例文
大八車だいはちぐるまが続けさまに田舎いなかに向いて帰って行く小石川の夕暮れの中を、葉子はかさつえにしながら思いにふけって歩いて行った。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それと同様、広い庭先は種々雑多の車が入り乱れている——大八車だいはちぐるま、がたくり馬車、そのほか名も知れぬ車の泥にまみれて黄色になっているのもある。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
大八車だいはちぐるまが三台、細引ほそびきだの滑車だの手落ちのないよう万事気を附け、岡倉校長を先導に主任の私、山田、後藤、石川、竹内、その他の助手、人足にんそくなど大勢が繰り込みましたことで
このお家にもこれ以上ご厄介やっかいをかけてはいけない、明日、また他の家を捜そうという事に二人の相談はまとまった様子で、あくる日、れいの穴から掘り出した品々を大八車だいはちぐるまに積んで
薄明 (新字新仮名) / 太宰治(著)
あけの六つどきには浪士は残らず下諏訪を出立した。平出宿ひらでしゅく小休み、岡谷おかや昼飯の予定で。あわただしく道を急ごうとする多数のものの中には、陣羽織のままで大八車だいはちぐるまを押して行くのもある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
引手ひきて馬方うまかたもない畜生ちくしやうが、あの大地震おほぢしんにもちゞまない、ながつらして、のそり/\と、大八車だいはちぐるまのしたゝかなやつを、たそがれのへい片暗夜かたやみに、ひともなげにいてしてる。重荷おもにづけとはこのことだ。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)