多摩たま)” の例文
茶には水が大事と申してな、京おもてでは加茂かも川、江戸では多摩たま川の水に限るようなことをいう向きがあるが、わしなぞはどこでもかまわん。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
同じ持って行くのならたくさん持って行って売った方が好いなんて、いつの間にやら商売気を出してくれたのが、私達の仕合せで、多摩たまの山奥から来た参詣人さんけいにんなどは
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
特徴というのはほかでもない。試衛館が、江戸にありながら、実質上は武州ぶしゅう多摩たま郡一帯の、身分からいって「農」を代表する、農村支配層の上に築かれていた点である。
新撰組 (新字新仮名) / 服部之総(著)
そして火葬に附して、僅かばかりの白骨を持ってかえって、今それを多摩たま墓地に埋めてある。
火葬国風景 (新字新仮名) / 海野十三(著)
武芝は武蔵国造むさしのくにのみやつこの後で、足立あだち埼玉さいたま二郡は国中で早く開けたところであり、それから漸く人烟じんえん多くなつて、奥羽への官道の多摩たま郡中の今の府中のあるところに庁が出来たのであるが
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
以上いじょう縄取なわどりによれば、多摩たま長流ちょうりゅう唯一ゆいつのたのみとし、武蔵野むさしの平地へいちと上流のてきにのみそなえをおかるるお考えのようにぞんずるが、かりに、御岳みたけうらにあたる御前山おんまえさん奇兵きへいをさし向け
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
台湾海峡では巡洋艦『多摩たま』が、敵の潜水艦『S三十号』をやっつけた。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
わたしの知る限りでも、東京で雷雨の多いのは北多摩たま郡の武蔵野町から杉並区の荻窪おぎくぼ阿佐ヶ谷あさがやのあたりであるらしい。甲信こうしん盆地で発生した雷雲が武蔵野の空を通過して、房総ぼうそうの沖へ流れ去る。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
中庸ちゅうよう地相ちそうくるわをひかえ、梅沢うめざわのすそに出丸でまるをきずき、大丹波おおたんばには望楼ぼうろうをおき、多摩たま長流ちょうりゅうほりとして、沢井さわい二俣尾ふたまたお木戸きどをそなえれば、武蔵野原むさしのはらつる兵もめったに落とすことはできない
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)