壁画へきが)” の例文
旧字:壁畫
じっさいにいるわけではなく、よく見ると、壁画へきがなのですが、それらが、四方からこちらへ歩いてくるように見えるのです。
魔法博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
またそのたしかに于闐コウタン大寺の廃趾はいしから発掘はっくつされた壁画へきがの中の三人なことを知りました。私はしずかにそっちへすすおどろかさないようにごく声ひく挨拶あいさつしました。
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
許斐山このみやまを越えると、道は西郷ノ庄を望んでひらけ、右の山切れには、折々、水平線低く、玄海灘が壁画へきがのような顔をあらわし、強い北風もしばらくは後ろの峠にさえぎられる。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、あたりを見廻すと、人音ひとおとも聞えない内陣ないじんには、円天井まるてんじょうのランプの光が、さっきの通り朦朧もうろう壁画へきがを照らしているばかりだった。オルガンティノはうめき呻き、そろそろ祭壇のうしろを離れた。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
村の教会は、村じゅうの建物たてもののうちで、いちばん、古いものになりました。ステンド・グラスはすすけ、天上のキリスト降誕こうたん壁画へきがのそばには、古いつばめのすが、へばりついていました。
丘の銅像 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
眼が暗さに慣れるにつれ、中に散乱した彫像ちょうぞう、器具の類や、周囲の浮彫うきぼり壁画へきがなどが、ぼうっと眼前に浮上うきあがって来た。かんふたを取られたまま投出され、埴輪人形ウシャブチの首が二つ三つ、傍にころがっている。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)