堵列とれつ)” の例文
ここでは国見岳(四四二〇尺)が正面に見え、左に妙見右に江丸えまると外輪山が、環状に堵列とれつして普賢ふけんむかっている有様ありさまがよく分かる。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
ヴォクセニスカという村へ辿りつくと、この機を逃さず珍種日本人を見学せばやとあって、黒土くろつち道の両側に土着の人民が堵列とれつしている。
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
と、州の長官以下、大小の諸役人から土軍はもちろん、土地ところの男女僧俗まで、みな道に堵列とれつして、こう大将を出迎えた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
別當のやかたは、この六坊をば、たとへば堵列とれつした兵士のやうに見て、それに號令してゐる指揮官といつたやうな前面の地位にあつて、天滿宮の本殿、拜殿と並んでゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
駅のフォームに婦人団体、女学生団などが、二、三百人も堵列とれつしている。これは、支那の前線から帰ってきた看護婦たちを出迎えているのだ。私たちの出迎え人も山のようである。
淡紫裳 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
村々の沿道には、老若男女が堵列とれつして殿下をお迎え申上げていた。
私服警官の堵列とれつするなかを
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
葬儀は、衣笠山きぬがさやまの等持院でいとなまれた。勅使の差遣さけん、五山の僧列、兵仗へいじょう堵列とれつ、すべて、儀式の供華くげや香煙のさかんだったことはいうまでもない。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤くびた鉄材の荒野。鳥打帽をかぶって首に派手な布を巻いた波止場の伊達者。眼の円い労働者たち。脚の太い駄馬の下をくぐって遊び狂う子供らの群。蒼いアウク灯の堵列とれつ。鎖の音。汽笛。
かがやく戦捷せんしょうの入城だ。将士は旌旗せいきを正してつつしみ迎えた。信孝は馬を降りて全軍堵列とれつのあいだを通った。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだこのような豪壮絢爛けんらんな軍隊を見たこともなく、曹操の顔も知らない西涼の兵隊は、途々に堵列とれつして
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこに光春の家臣が堵列とれつしていた。ひとりの老臣は、傘をひらいて、うやうやしくさし出した。それを四方田政孝がうけ取って主人の上にしかける。藤田伝五は、光秀のみのを持つ。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見れば、彼の兵は、列の真っ先に、白錦襴しろきんらんおおいをした柩を高々と担っている。門外に堵列とれつしていた五百余人の部将や士卒はびっくりした。葬式が出てきたと思ったからである。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奉行所の門を離れると、武松の姿を待っていた人々が、道ばたに堵列とれつしていて、みな別れを惜しむふうだった。或る者は、彼に衣服や食物を贈り、或る者は道中の薬などを餞別せんべつにくれた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、堵列とれつの群臣も、声をあわせて
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)