城戸きど)” の例文
ひとたび、高坂弾正が、信玄味方の信濃衆を糾合きゅうごうして、同時に、その城戸きどを開いて襲いかかって来るならば——事、決して容易ではない。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どよめき立って、西の城戸きどをひらき、また、火焔をついて躍り出る者もあったりなどして、完全に、寄手の兵をふくろ包みにしてしまった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、つまらぬ事のみつい申し上げた。余事はさてき、要するに、ご進撃はいつの事か。東の城戸きどせるにも、手心を合せねばならぬが」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また一方の直義は、わざと岩井村の東を迂廻して、町屋へまぎれ入ろうとしたが、しかし曲輪口には、城戸きどがあった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
搦手からめては山、水の手も無事です。ただ西の城戸きどに、ときこえはしましたが、御城内の守りがかたいとみえ、頑として、ただこだまがするだけのようでした」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柵の周囲しゅうい群集ぐんしゅういはらうと、そこのひろい城戸きどが八文字もんじにあいて、御岳山道みたけさんどうの正面のみちが、試合場からズッとゆきぬけに口をあいたかたちになる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たがいにきつかれつして、八ちょうばかりの坦道たんどうを、見るまに、二町走り三町走り、六町走り、アア、あとわずかと試合場しあいじょう城戸きどまで、たッた二、三十けん——。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浅井七郎右衛門、同玄蕃げんばという者に、三田村右衛門大夫の兵が合体して、およそ八百人ばかりが、横山城の城戸きど枯柴かれしばの山をつんで、焼き立てているところという。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、城戸きどへ向って行ったので、家臣の庄田喜兵衛次きへえじ、服部織部介おりべのすけなどが大手の坂まで追いかけて
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも平家方では、夜来の情勢に緊張して、寝もやらず諸所にかがりを焚き明かしている。陣所陣所の仮屋、はためく幕、城戸きど逆茂木さかもぎなど、美しいばかり明滅して見える。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれほど急ぎながら、何で悠々とここへ来ていくさもせず日を過しておられるか。——蒲殿にはすでに糺附近ただすふきんの敵を破り、一ノ谷の東の城戸きどを目ざして、着々進んでおられるのに
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黄祖、蔡瑁さいぼう、蒯良なんどみな一度に城戸きどをひらいて、どっと寄手のうちへ衝いて行った。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
試合場しあいじょう城戸きどから、八ちょう参道さんどうとよぶひろ平坦へいたんさかをかけおりてゆくうちに、燕作の小粒こつぶなからだはみるみるうちにされて、とてもこれは、比較ひかくにはならないと思われるほど
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冷え冷えと青い木暗こくらがりをつつむ広大な城戸きどの内は、鑁阿寺ばんなじの七堂伽藍がらんをもあわせて、裏山にまで屋形の屋根を望ませていた。いうまでもなく足利党の宗家、足利貞氏の本拠だった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
劉岱は、最後の号令を発し、ついに、防寨の城戸きどをひらいて、どっと追いかけた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おういっ、夜詰ども。——東の城戸きどに、喧嘩があるぞ。出合え、出合え」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)