垢染あかじみ)” の例文
そのうち磯が眠そうに大欠伸おおあくびをしたので、お源は垢染あかじみ煎餅布団せんべいぶとんを一枚敷いて一枚けて二人一緒に一個身体ひとつからだのようになって首を縮めて寝て了った。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
かたしめて立出たり折柄師走しはすの末なれば寒風かんぷうはだへつらぬく如きを追々の難儀に衣類は殘ず賣拂うりはらひ今は垢染あかじみたる袷に前垂帶まへだれおびをしめたるばかり勿々なか/\夜風はしのぎ難きを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
無数のちいさ塵埃ほこりは一つ一つ光って明るい海を泳いでいた。吉太は慌ててその皿を奪うようにると垢染あかじみた懐の中に隠してしまった。軒の柱には、黒い鳥が籠の中に入って懸っている。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
垢染あかじみ煎餅布団せんべいぶとんでも夜は磯吉と二人で寝るから互の体温で寒気もしのげるが一人では板のようにしゃちっ張って身に着かないで起きているよりも一倍寒く感ずる。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
致させしに夜具衣類迄姑女の着たるは格別かくべつ垢染あかじみも爲ず綿なども澤山に入てあり又菊が分はたゞ今夫に着て居る外は何一ツなきがされども破れたる骨柳こり一ツあり其中に反古ほご
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
頭髪かみのけ垢染あかじみて肌色の分らぬ程黒くなった顔に垂れ下って、肩の破れた衣物きものを着て、縄の帯を占めて裸跣はだしで、口の中で何をかつぶやきながら、何処いずこともなく歩き廻り、外に遊んでいる子供を驚かした。
(新字新仮名) / 小川未明(著)