坐視ざし)” の例文
もしさらに一二年を放置せば、心身ともに萎靡いびし終らんとす。坐視ざしするに忍びざるものあり。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ただ冒進ぼうしんの一事あるのみと、ひとり身をぬきんで水流をさかのぼり衆をてて又顧みず、余等つゐで是にしたがふ、人夫等之を見て皆曰く、あに坐視ざしして以ていたづらに吉田署長以下のたんやと
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
……くより、みかどにはふかくおんたよりにおぼされ、時あれとしておわせしが、宇内八荒うだいはっこうのありさま、今や坐視ざしあらせらるるに忍び給わず、ついに御意ぎょいを決して、二十四日払暁
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
親心として宰相中将の他家の息女と結婚するのを坐視ざしするに忍びなくなった。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
これは国家危急のときで武士の坐視ざしすべきでない、よって今からここを退去する、幸いに見のがしてくれるならあえてかまわないが万一職務上見のがすことはならないとあるならやむを得ない
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ああ、何とも困ッた。二人がここで身を退けばいいというだけのものではなくなった。どうしよう。石秀。おれたちとしても坐視ざししていられまいが」楊雄ようゆうが頭をいためての嘆息に、石秀もついに
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)