坐睡いねむり)” の例文
論理的で趣味のないむつかしい事ばかり聞いて居ると、坐睡いねむりの出るような事ばかりいわれるから私共は仏法の坊主でありながら厭であった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そうした貴方様、勉強家でござりました癖に、さて、これが療治にかかりますと、希代にのべつ、坐睡いねむりをするでござります。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ダイヤモンドの熖に火傷やけどもせず、坐睡いねむりをしている様々な石が目を覚さないように、その間を抜けて通る。
坐睡いねむりをせぬまでも、十三歳やそこらの小童こわっぱだから、眼の皮をたるませて退屈しきって居るべき筈だのに、耳を傾け魂を入れて聞いて居た様子は、少くとも信長や自分の談論が解って
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
叔父はこくこく坐睡いねむりをしていたっけ。わっしあ若気だ、襟巻で顔を隠して、にらむように二人を見たのよ、ね。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むく毛の生えたくびを垂れて、白襯衣君の肩へ眉毛まで押着けて、坐睡いねむりをはじめたのですが、俯向けじゃあ寝勝手ねがってが悪いと見えて、ぐらぐら首をゆするうちに、男の肩へ
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
坐睡いねむりをしていたのか、寝惚面ねぼけづらで承るとむっくと立ち、おっと合点お茶の子で飛出した。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
現に私の頭の上には、緋手絡ひてがら大円髷おおまるまげ押被おしかぶさって、この奥さんもそろそろ中腰になって、坐睡いねむりをはじめたのです。こくりこくりと遣るのに耳へも頬へもばらばらとおくれ毛がかかって来る。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しみじみ歎息たんそくした、第一ぼんを持って女中が坐睡いねむりをする、番頭が空世辞そらせじをいう、廊下ろうか歩行あるくとじろじろ目をつける、何より最もがたいのは晩飯の支度したくが済むと、たちまちあかり行燈あんどんえて
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
坐睡いねむりをひやかす時に(それ、ねむの浜からおむかえが。)と言います。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)