土塊どかい)” の例文
さあ大変! 東京ビルの横腹を染めていた大火光は、その盛りあがった土塊どかいのなかから、照空灯しょうくうとうのようにパッとさし出ているのであった。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
灰色はいいろ土塊どかいが長く幾畦いくあぜにもなっているかと思うと、急にそれが動きだしたので、よく見るとひつじの群れのが見えていたのでした。
彼は土塊どかいの下に馬鈴薯とは見えずしてむしろ醜怪な円屋根形まるやねがたの頭をもった、きのこのような形をした変なものを掘り出した。
ただまろい土塊どかいにしか見えなかった物は、あたりの白むにつれ、次第に、すだれのような髪の毛の下に、骨ばかりになった皮膚の異様な変りかたをあらわした。
彼の幼きや土塊どかいを以て宮闕きゅうけつの状をつくり、曰く、これ織田信長が禁裡きんりの荒廃を修繕したるにするなりと。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
いまは朝廷から不逞ふていなむほん人とられ、天地に身をいれるところはない。生きんとすれば、ただこの梁山泊の仲間うちと、一土塊どかいの小天地があるのみだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なるほど話に聞いたよりひどい光景じゃ」と博士は目をみはりながら、崩れたビルの土塊どかいを手にとりあげたりしていたが「これはなかなか強い道具でこわしたと見える」
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が、せきとしたきり、土塊どかいの群れを思わせる将士の列はいつまで何の声だになかった。かすかな列のせせらぎは鬼みたいな男が顔をおさえているすすり泣きなのだった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すこしばかりこんもりと盛り上った土塊どかいや、水の一滴もないくぼみ、それから黒くくすんでいる飛石らしいのが向うへ続いて、にぎやかに崩れた煉瓦塀のところまで達している。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ははッ——」と、敬二はねずみのように逃げだしてビルの崩れた土塊どかいの上によじあがった。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一塊の土塊どかいに寄せるべく余りに彼の情涙は熱かった。土を抱いて泣き伏したまま
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さあ——」と警部が不図ふとかたわらの土塊どかいに眼をうつしますと、妙なものを発見しました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
僕は水中電話器を通して、何者とも正体しょうたいの知れない土塊どかいに声をかけた。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)