圏外けんがい)” の例文
旧字:圈外
その何処いずこにも興味を見出みいだし得なかった彼は、会談の圏外けんがい放逐ほうちくされるまでもなく、自分かららちけ出したと同じ事であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鉦鼓しょうこ喧噪けんそうしてひたすらに幽霊の追却につとめているのは、これまた仏教の圏外けんがいのものであるらしいことは、数年前にもすでにこれを説いたが
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
だが、地の利と、嶮岨けんその安全感から、この人々は、台風たいふう圏外けんがいにいる気もちで、至極、悠暢ゆうちょうにかまえこんでいたらしい。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぼくにとって、勝負なぞ、初めは、どうでも好いのですが、やはり良い当りをみせて、あなたの持ち輪を圏外けんがいみぞのなかに、叩き落したときなぞ、思わず快心のみがうかぶ、得意さでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
コークス工場も何時の間にか無くなり、その外国人も何処に行ったやら消えてしまったが、ここに残った一劃いっかくの部落は、その後町の発展の圏外けんがいにありながら、一つの任務を帯びるようになった。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
圏外けんがいにいたものには通用しないかも知れませんけれども、どうも今の私からふり返ってみると、そんな気がどこかでするように思われるのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、逆に、それが族長の息子どもからは疑われ、以来、門を閉じたきり、今度の騒ぎには全く圏外けんがいにいて静かに矢傷やきずの身を療治していたのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただしはまた一国民俗学等の別な名称をもって、その圏外けんがいに置くべきものであるか。少なくとも民族学協会の諸君は、どちらを正しいとせられるであろうか。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
こう云った小林は肝心かんじんなところへ来て、知らん顔をして圏外けんがいへ出てしまった。津田は失望した。その失望をしばらく味わったあとで、小林はまた圏内けんないへ帰って来た。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
にもかかわらず、いつのまにか、甲斐は天下の大勢から圏外けんがいにおかれかかっている。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今まで団体的に旋回していたものが、吾知われしらず調子をはずして、一人圏外けんがいにふり落された時のように、淡いながら頼りを失った心持で、彼女は自分のうちの玄関を上った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ぐらいなもので、飽くまで、ここらは戦争圏外けんがいと心得ていた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これまでの九州は、いわば中央争覇そうは圏外けんがいだった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)