ばや)” の例文
牛にひかせた見上げるような金ピカの屋台車の下を贅沢な縮緬ちりめんの幕で囲って、町内の師匠やお囃子はやし連が夢中になってチャッチャッチキチと馬鹿ばやし。
内裏雛だいりびな、五人ばやし、左近さこんの桜、右近うこんたちばな雪洞ぼんぼり屏風びやうぶ蒔絵まきゑの道具、——もう一度この土蔵の中にさう云ふ物を飾つて見たい、——と申すのが心願でございました。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
緋羅紗ひらしゃを掛けた床の雛段には、浅草の観音堂のような紫宸殿ししいでんいらかが聳え、内裏様だいりさまや五にんばやしや官女が殿中に列んで、左近さこんの桜右近うこんの橘の下には、三人上戸じょうご仕丁じちょうが酒をあたゝめて居る。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「騒々しいと云やあこの間或る所で聴いたんだが、あのジャズ・バンドと云うものは、ありゃあ何だい? まるで西洋の馬鹿ばやしだが、あんなものが流行はやるなんて、あれなら昔から日本にもある。———テケレッテ、テットンドンと云う、つまりあれだ」
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)