噛切かみき)” の例文
するとあるとき、ライオンが猟人かりうどつかまつてしばられたとこへれいねづみて「おぢさん、つといで」とつてしばつたなわ噛切かみきつてやりました。
それでは私が御介錯ごかいしゃく、舌を噛切かみきってあげましょう。それと一所に、きものたばねを——この私の胸を一思いに。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大きなゐのししと大きなくまが、二疋共ひきとも引掻ひつかかれて、噛切かみきられて、大怪我おほけがをして死んで居るぢやありませんか。しかも二疋とも大きな石を腹の下に抑へて、頭を並べて死んで居るのです。
熊と猪 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
顔はかくれて、両手は十ウの爪紅つまべには、世に散るまんじの白い痙攣けいれんを起した、お雪は乳首を噛切かみきったのである。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前刻さっきから幾度いくたびか、舌をんで、舌を噛んで死のうと思っても、三日、五日、一目も寝ぬせいか、一枚も欠けない歯が皆ゆるんで、噛切かみきるやくに立ちません。舌も縮んでくちびるを、唇を噛むばかり。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)