君寵くんちょう)” の例文
第三者が見れば君寵くんちょうに変わりはないと見えることもその人自身にとっては些細ささいな差が生じるだけでも恨めしくなるものらしいですよ。
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
喬木きょうぼく風にあたる。何しろ、御勲功の赫々かっかくたるほど、人のっかみもしかたがあるまい。わけて特に、君寵くんちょう義貞に厚しともあれば……」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「むかしから頼みにならない事を、君寵くんちょう頼みがたし。老健頼み難しなどというじゃないか。はははは。進は相変らず達者か。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
君寵くんちょうを奪おうと、日頃からねらいに狙っている女性にょしょうたちの耳に、この真相が達した破目には、まるで蜂の巣を、突付きこわしたような騒動が起るは必定ひつじょう——しかも、それが
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
したがって何故淫蕩頽廃たいはいを極めた往古の埃及エジプト貴族の夫人たちが、この犬を愛育したか君寵くんちょうを失った後宮ハレムの宮女たちがこの犬を愛玩したか、これで大体の御想像もお付きになれたことと思いますが……
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
「昔の美人よ。君寵くんちょうが薄らいだので世を果敢はかなんだのですって」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
君寵くんちょうも厚く、大きなやしきあるじともなってくれて、その邸でこうして一杯の酒の馳走にでもなるということは、世話がいがあったという気持から
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちと、君寵くんちょうも過ぎよう。というと、あいつにさからった者、なぜか、みな亡びておる。何しても、うるさい猿面。とか。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母の妙光尼の老後の幸福も、兄弟多勢の今日の出世も、ひとえにみな蘭丸の君寵くんちょう浅からぬためといってよい。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは数正に、決定的な君寵くんちょうを飾った。のみならず彼は、大坂新城に出向いて、秀吉からは大もてにもてた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第一に、氏郷は、信長の君寵くんちょう浅からぬ頃において、信長の末のむすめをめとって妻としている。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして一方は巌流を擁して、いよいよ君寵くんちょうのお覚えをたのみ、長岡様にもまた彼をはいし、御自身の派閥を重からしめんとしておるなどと、あらぬことを、道中などにても聞き及びました
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)