叢立むらだ)” の例文
たけなす薔薇ばら、色鮮やかな衝羽根朝顔つくばねあさがお、小さな淡紅色ときいろの花をつけた見上げるようなたばこ叢立むらだち、薄荷はっか孔雀草くじゃくそう凌霄葉蓮のうぜんはれん、それから罌粟けし
古い油絵に見るようにこんもりした杉のところどころに叢立むらだっているのが、山の気の深さを感じしめた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼れの神経は一時に叢立むらだった。しかしやがて彼れの前に立ったのはたしかに女の形ではなかった。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
かくて人々深き眠りに入り夜ふけぬれど、この火のみはよく燃えつ、炎は小川の水にうつり、煙はますぐに立ちのぼりて、杉の叢立むらだつあたりに青煙一抹せいえんいちまつ、霧のごとくに重し。
(新字新仮名) / 国木田独歩(著)
いそがしき世は製造所の煙筒えんとう叢立むらだつ都市の一隅に当ってかつては時鳥ほととぎす鳴きあしの葉ささやき白魚しらうおひらめ桜花おうか雪と散りたる美しきながれのあった事をも忘れ果ててしまう時、せめてはわが小さきこの著作をして
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
つくばひの日あたりに見て春あさき土賊とくさは硬し叢立むらだちにけり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
その肩のような雷電峠の絶巓ぜってんをなでたりたたいたりして叢立むらだち急ぐ嵐雲あらしぐもは、炉に投げ入れられた紫のような光に燃えて、山ふところの雪までも透明な藤色ふじいろに染めてしまう。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
つくばひの日あたりに見て春あさき土賊とくさは硬し叢立むらだちにけり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
森と言へば叢立むらだつ霧のこちごちに氣高けだかく厚くとりで立てたる
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
森と言へば叢立むらだつ霧のこちごちに気高けだかく厚くとりで立てたる
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)