取膳とりぜん)” の例文
二三度呼ばれてよんどころ無く、薄気味わるわる降りてみれば、お政はもウ帰ッていて、娘と取膳とりぜんで今食事最中。文三は黙礼をして膳に向ッた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
誰もう云うが、何うも自分の好いた女と、とこ取膳とりぜんで飯でも喰わなけりゃア詰らんからね、何も熱く成ってると云う訳じゃア無いが、僕の方からおくのを好いて持った訳でも無い
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そこで、炬燵櫓こたつやぐらの上で、二人はお取膳とりぜんの形で、安倍川を食べにかかりました。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
冷奴ひややっこ紫蘇しその実、白瓜しろうりこうもので、わたくし取膳とりぜんの飯をあがると、帯をめ直して
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
... 拵えて二人で仲好くお取膳とりぜんで食るけれども」雇婆「オホホおたのしみでございますね」主人「楽みさ、この位な楽みはないの、和女おまえが見たってお登和さんはい女だろう、あの位な女は滅多めったにないだろう」雇婆「ホンに好いお嬢さんです。お容色きりょうばかりでありません。お気立がお優しくって御親切で昨日きのうも私に半襟はんえりを ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ふむ、世の中にはそんな事もあるものですか、妙だね、ふふふで聞き流いて、お能の姉さんと面白そうに、お取膳とりぜんで何か召あがっておいで遊ばすような事もあるまいと思われる。な、あんた。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三「お取膳とりぜんで、八寸を四寸ずつ喰う仲の善さ、という川柳があります」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)