取直とりなお)” の例文
ハッと気を取直とりなおして、獅子の鬣の毛がライオンの頭のようにユラユラと逆立ったと見るや、ピアノの上に、バタリと上半身を俯伏せました。
呪詛のろいの杉より流れししずくよ、いざなんじちかいを忘れず、のあたり、しるしを見せよ、らば、」と言つて、取直とりなおして、お辻の髪の根に口を望ませ
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
不機嫌は当人も持てあましているのだから、はたからのひょっとした誘いで気が取直とりなおせ、当人も助かることがある。
良人教育十四種 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
とポロリとこぼしずく、文治郎はこれを見て、あゝ嫁に来た晩に荒々しい身なりをして出てくのを見れば驚くであろうと思いましたけれども、癇癖が高ぶって居りますから気を取直とりなおして
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
腹立紛はらたちまぎれに箒を取直とりなおして、お葉の弱腰をはたぐと、女は堪らず又倒れた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
秋月九十郎は僅かに気を取直とりなおしました。次第によっては、此儘このまま切込きりこんで行く気になるかも知れません。
腹蔵ふくぞうなく大笑おおわらいをするので、桂木は気を取直とりなおして、そっづ其のたもとの端に手を触れた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
鉄砲を取直とりなおしながら後退あとじさりに其処そこを出た。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
係りの警部は気を取直とりなおして聞きました。