ならび)” の例文
旧字:
ならびおかのさる法師の家にいて、小右京さまと共に、誰やら申す元お公卿の僧を、懸命に毎日さがし歩いているとのことでございましたが」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこには、黒漆塗の六枚厨子扉があって、青銅でならび獅子を刻んだ閂の上には、大きな錠前がぶら下っていた。
夢殿殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
たま/\当時にならびなき尊き智識に知られしを、是れ一生の面目とおもふてあだに悦びしも真に果敢無き少時しばしの夢、嵐の風のそよと吹けば丹誠凝らせし彼塔も倒れやせむと疑はるゝとは、ゑゝ腹の立つ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ならびおか
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「こうさっそくに、事のはこびがついてきましたのは、まったくお差向けの薬師丸がならびおかへ見えたからでございまする」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おお、その小右京でございまする。ならびおかの法師のおすすめやら、いまは亡き草心尼そうしんにさまの、たってのおことばで……」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ならびおかの法師といえば、あの兼好にちがいない。右馬介がそこのいおりに寝泊りして、八方、院宣の入手に奔走しておるよしを、たったいま耳にした。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ならびおかの草庵で長く病んででもいたのか、旅先で果てたのか、よくもわからず、またその死をいたむ者もない。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
命松丸もそれはよいしのぐさともなり、またあれほどなお人の文字をもったいないことだとも考えて、ならびおかや吉田山の旧草庵の物をていねいに剥がして、やがて今川了俊の手もとへとどけた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「今朝ほど、ならびおかへ行くと仰っしゃって、早くにお出かけでしたから」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝餉あさげをくれ、ひとまずならびおかへ帰れと申して追いやりました」