厄払やくはら)” の例文
「満山の大衆だいしゅ」手で鼻を抑え、声まで変らせて、西塔さいとう、東塔、叡山えいざんの峰、谷々にある僧院の前へ行っては、厄払やくはらいのように、呶鳴ってあるくのであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天道てんとうさまにも御一同にも相すまなく、心苦しくて落ちつかず、酒でも飲まなけりゃ、やり切れなくなって、今夕御一同を御招待して、わしの過分の仕合せの厄払やくはらいをしようとしたのに
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼らの平常生活における迷信の風俗について伝聞するところによると、夜中、犬の遠ぼえするを聞くときは、家族中に必ず死するものあるべしとの迷信より、祈祷きとうして厄払やくはらいをすること。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
長崎のふうに、節分の晩に法螺ほらの貝をふいて何か経文きょうもんのような事を怒鳴どなってわる、東京でえば厄払やくはらい、その厄払をして市中の家のかどに立てば、ぜにれたり米を呉れたりすることがある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
さてさま/″\の雑談ざふだんのなかにあるじのつま牧之ぼくしに、としこしの夜は鬼のるとて江戸には厄払やくはらひといふものありて鬼をふ事をおもしろくいひたてゝ物乞ものこひすときゝしが、むかしもさる事ありしや