千住せんじゆ)” の例文
私はあまり知人たちを見かけない千住せんじゆや三河島、あるひは尾久をぐから板橋にかけて、都会の汚れた裾廻しを別に要事もなく仔細ありげに歩き廻つてゐた。
大凶の籤 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
むつまじきかぎりは宵よりつどひて、船に乗りて送る。千住せんじゆといふところにて船をあがれば前途三千里の思ひ胸にふさがりて、幻のちまたに離別のなみだをそゝぐ。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
うす氣味きみわるやにたにたのわらがほ坂本さかもといでては用心ようじんたま千住せんじゆがへりの青物車あをものぐるまにお足元あしもとあぶなし、三島樣しまさまかどまでは氣違きちが街道かいだう御顏おんかほのしまりいづれもるみて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
斯ういふ商売だ。牛込や神田には向かんが本所、下谷、小石川の場末、千住せんじゆ、板橋あたりで滅法売れる、ひゞあかぎれ霜傷しもやけの妙薬鶴の脂、膃肭臍おつとせいの脂、此奴こいつが馬鹿に儲かるんだ。
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
千住せんじゆですよ。ふんどし一つになつて、元日の天道樣に照されてゐるんだから、諦らめた野郎で」
築地つきぢ河岸かしの船宿から四挺艪しちやうろのボオトを借りて遠く千住せんじゆの方まで漕ぎのぼつた帰り引汐ひきしほにつれて佃島つくだじまの手前までくだつて来た時、突然むかうから帆を上げて進んで来る大きな高瀬船たかせぶねに衝突し
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
千住せんじゆ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)