別品べっぴん)” の例文
伊太利イタリイの公使館にいた時、すばらしい別品べっぴんの処へ連れてかれたのに、顫え上ってどうもすることが出来なかったというじゃあないか。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
『そいつは惜しかった十六、七で別品べっぴんでモデルになりそうだと来ると小説だッたッけ、』と言って『ウフフフ』と笑った。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
と、合引橋あいびきばしの泳ぎで、新富町の寄席よせ内川うちかわ亭にいる娘が泳いでいたのを、別品べっぴん女中を連れておよぎに行くと出ている。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それは大人数の一隊だったが、色々さまざまな連中がどっさりいる中で、婦人班にすこぶる附きの別品べっぴんが二人いた。
鴎外の、「妻への手紙」というのをよんで、別品べっぴんだの何だのという古風な表現をよんだものだから、きっとそんな夢で人力俥なんか見たのかもしれない。
年紀としは十六七でネ、随分別品べっぴんは……別品だッたけれども、束髪の癖にヘゲル程白粉おしろいけて……薄化粧なら宜けれども、あんなに施けちゃア厭味ッたらしくッてネー……オヤ好気なもんだ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そもそもその花柳の談を喋々喃々ちょうちょうなんなんするは、何を談じ何を笑い、何を問い何を答うるや。別品べっぴんといい色男といい、愉快といい失策というが如き、様々の怪語醜言を交え用いて、いかなる談話を成すや。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
花子は別品べっぴんではないのである。日本の女優だと云って、或時忽然こつぜんヨオロッパの都会に現れた。そんな女優が日本にいたかどうだか、日本人には知ったものはない。久保田も勿論もちろん知らないのである。
花子 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
別品べっぴんですよ」、といって下女は莞爾々々にこにこしている。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「クロポトキンは別品べっぴんの娘を持っているというじゃないか。」
食堂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「諸君。大臣閣下はほかに今一つ宴会がおありなさるそうで、お先きへお立ちになりました。諸君によろしく申してくれと云うことでありました。どうぞ跡の諸君は御ゆっくりなさるように願います。只今別品べっぴんが参ります」
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)