刎付はねつ)” の例文
夫れを誉めもせずに呼出しに来るとは友達甲斐がいがないじゃないかとおおいに論じて、親友の間であるから遠慮会釈もなく刎付はねつけたことがある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その時主人がイヤどうもせんと一言のもと刎付はねつけてやっぱり物を考えていたら妻君はいよいよ心配になってまるまい。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
維幾は将門の申込に対して、折角の御申状おんまをしじやうではあるが承引致し申さぬ、とかう仰せらるゝならば公の力、刀の上で此方心のまゝに致すまで、と刎付はねつけた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そうしてモデルツて來るモデルもモデルもかたはしから刎付はねつけて、手蔓てづるてやツとこさ自分で目付めつけ出したモデルといふのがすなはちお房であツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
手厳しく刎付はねつけられたのにカッとなり、嫉妬と怨恨とに燃えていた全身の血は、一時に頭に昇ったと思うと、夢中で彼女に飛びかかり、力をこめて細い首を絞めつけました。
青い風呂敷包 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
許して下さいといふ私の死身しにみの歎願を無情にも刎付はねつけて、二度私を暗い幽靈の出る部屋に閉ぢ籠めた時に、私の心を掴んだ苦悶の痙攣けいれんやはらげる何ものも、私の記憶にはなかつたのだ。
何故なぜ綺麗きっぱり刎付はねつけてしまわなかったんだ。」
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
の時に乃公が何と云た、乃公は酒は飲みたくてたまらないけれども金がないから飲むことは出来ないと刎付はねつけて、その翌日は又此方こっちから促した時に、お前は半句の言葉もなかったじゃないか。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)