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刀柄
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つか
侍「亭主や、
其処の黒糸だか紺糸だか知れんが、あの黒い色の
刀柄に
南蛮鉄の
鍔が附いた刀は誠に
善さそうな品だな、ちょっとお見せ」
かゝれ/\と
刀柄をたゝけば、応と意気込む覚えの面々、
人甲斐も無き
旅僧一人。何程の事やあらむと
侮りつゝ、雪影うつらふ氷の
刃を、抜き
連れ抜き連れ
競ひかゝる。
当季斯やうな
物は誠に少なくなりましたがと
云つて、
服紗を
刀柄へ
巻いて
抜くんだよ、
先方へ
刃を
向けないやうに、
此方へ
刃を向けて
鋩子先まで
出た処でチヨンと
鞘に
収め
といいながら今刀屋で見ていた備前物の
刀柄に手が掛るが早いか、スラリと
引抜き、
酔漢の鼻の先へぴかりと出したから、見物は驚き
慌て、弱そうな男だからまだ
引抜はしまいと思ったに