全焼まるやけ)” の例文
旧字:全燒
兵粮方ひょうろうかたの親族に死なれ、それからやむを得ず再び玄関をひらくと、祝融しゅくゆうの神に憎まれて全焼まるやけと相成ったじゃ、それからというものはる事なす事いすかはし
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その晩、隣から火が出て、大杉氏の家は全焼まるやけになつた。焼けなかつたものは、主人と恋女房の野枝のえさん位のもので、書物も何もすつかり焼いてしまつた。
全焼まるやけのあとで、父は煩って世を去った。——残ったのは七十に近い祖母と、十ウばかりの弟ばかり。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
猿でも猩々しょうじょうでも、そんなものには構わずに置くがい。先年駐在所の巡査が𤢖を追って山の奥へ入ったら、その留守に駐在所から火事がはじまって、到頭とうとう全焼まるやけになってしまったことが有る。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何処どこの田舎だかおらア知らねえ、何でもおれ五歳いつゝの時田舎から出て、神田の三河町へ荒物みせを出すと間もなく、寛政九年の二月だと聞いているが、其の時の火事に全焼まるやけになって
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
三月三日の晩、全焼まるやけにあいなすった。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
市兵衛町いちべえちょうの火事に全焼まるやけと成りまして、たちまちの間に土蔵を落す、災難がある、引続き商法上では損ばかり致して忽ち微禄して、只今の商人方あきんどがたちがって其の頃は落るも早く、借財もかさ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)