優男やさをとこ)” の例文
主人の六兵衞は呆氣あつけに取られました。一人娘のお美代を殺したのは、一番忠實らしい顏をして居た優男やさをとこの谷五郎とは思ひも寄らなかつたのです。
しや眼前にかばねの山を積まんとも涙一滴こぼさぬ勇士に、世を果敢はかなむ迄に物の哀れを感じさせ、夜毎よごとの秋に浮身うきみをやつす六波羅一の優男やさをとこを物の見事に狂はせながら
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
これが所夫をつとあふがれぬべくさだまりたるは天下てんか果報くわはう一人ひとりじめ前生ぜんしやう功徳くどくいかばかみたるにかとにもひとにもうらやまるゝはさしなみの隣町となりまち同商中どうしやうちゆう老舖しにせられし松澤儀右衞門まつざはぎゑもん一人息子ひとりむすこ芳之助よしのすけばるゝ優男やさをとこ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
六兵衞を引つ立てて、飛んで行つて見ると、おひなを小脇に抱へた手代の重三、女のやうな優男やさをとこに似氣なく八五郎を大地に叩き付けて、起き上がらうとするのへ匕首あひくちが——。
他の一人は年の頃廿六七、前なる人の從者ずさと覺しく、日に燒け色黒みたれども、眉秀いで眼涼しき優男やさをとこ、少し色剥げたる厚塗の立烏帽子に卯の花色の布衣を着け、黒塗の野太刀を佩きたり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
この優男やさをとこの智慧の廻るのに、平次も一寸驚いた樣子です。