傍人ぼうじん)” の例文
途中で犬にえられる。ワーと泣いて帰る。御母さんがいっしょになってワーと泣かぬ以上は、傍人ぼうじんが泣かんでも出来損いの御母さんとは云われぬ。
写生文 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
酒気を帯びて新道の店に来り、入場料を払ひて場内に入りしが、突然彼の鱷を飼養しあるブリツキ盤に近づき、傍人ぼうじんに一語を交へずして鱷の口内に闖入せり。
四十九日の配物くばりものが済んだ頃から遊所に通いはじめ、ようやく馴れては傍人ぼうじんの思わくをも顧みぬようになった。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
とは、信長の幼少から守役もりやくの平手中務が、何か持て余すたびに傍人ぼうじんへもらして来た嘆息だった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
空論ばかりにては傍人ぼうじんに解しがたく、実例につきて評せよとの御言葉ごもっともとぞんじ候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
傍人ぼうじんに示さぬのを常としたのである。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「振落されるのは嫌じゃから、あらかじめ、馬のごきげんを取って乗る。しかし、傍人ぼうじん怪訝いぶかられるほど、それが目立つとすればわしにも到らぬ点がある。以後は気をつけよう」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余が鮮血を多量にいて傍人ぼうじんからとうてい回復の見込がないように思われた二三日あと、森成さんが病院の用事だからと云って、ちょっと東京へ帰ったのは、生前に一度院長に会うためで
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むしろ病めば病むほど、傍人ぼうじんの案じるのをも押して、軍務に精励してやまない彼であった。近頃聞くに、敵の軍中には、また気負うことさかんなる将士が、大いに司馬懿しばい怯惰きょうだを罵って
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
羽柴とも、筑前ともいわず、あれがかといって、傍人ぼうじんに口汚くわらったそうである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百合若大臣ゆりわかだいじんいくさにしつかれ、熟睡せられしにも超えたり。傍人ぼうじん、笑止に思ひはべりていふ。およそ、人の気根もつづく程こそ有るべけれ。ぬる年のうちは、つひに夜のひまさへ穏かならざりし。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)