偽者にせもの)” の例文
柳生の藩中と称しておったとすれば、とんでもない偽者にせものでござるから、かってに御処置あるよう——立派に言いきってしまった。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
俗の中には、俗の眼でもわかる偽者にせものしかおらぬが、君子聖人のうちには、らっきょうのように幾皮もかぶっておるのが多いでなあ
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あなたの鑑定通り、どうでその幽霊は偽者にせものに相違ありませんが、わたくしも最初は甚吉の家の奴らだろうと思っていました。
真鬼偽鬼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もう壁にぶっつかったようにペンをわしづかみにして、原稿紙をピリピリさせながら——この臆病者おくびょうもの卑怯者ひきょうもの、子供にも親にもひかれるこの偽者にせものめ——などと殴り書きした。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
重三郎は間違いもなく偽者にせものだ——お安を殺して、忠五郎も亡きものにしようとしたのは、偽者と知っている者を殺して、ぬくぬくと小松屋の跡取りになるつもりだったのさ。
偽者にせものあきらかになれば、申し分は無い。万一御落胤ときまった折には——何と申すか」
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
画家や俳人の偽者にせものは、実際絵なり句なりを作らせてみれば看破かんぱするのも容易だが、小説家の偽者にせものは、眼の前で小説を作るなどと云ふ御座敷芸のない為に看破しにくいのに違ひない。
偽者二題 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
偽者にせものばかりが世の中にいるからだよ」と僕は答えた。
(新字新仮名) / 梅崎春生(著)
その声音こわねまでが同じであるので、婿の家も供の者も、どちらが真者ほんものであるか偽者にせものであるかを鑑別することが出来なくなった。
「なんたるつらだ。王倫っ。それが頭領の態度か。恥を知れ、この落第書生め、仁義の皮をかぶッた偽者にせものめ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それと同時に、この偽者にせものの正体も大かたは判った。半七は息を殺して窺っていると、偽の半七は又云った。
半七捕物帳:64 廻り灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「よし。とにかく二人を曳ッ張ってこい。たぶん偽者にせものだろうが、どんな嘘をいうか、聞いてみるのも一興だ。もっと篝火かがりびを明るくして、おれの前に引きすえろ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と忍剣は苦笑して、さきに打ちたおした黒衣こくいの影武者をのぞいたが、呂宋兵衛るそんべえ偽者にせものと知って舌打したうちする。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
偽者にせものかな」
半七捕物帳:04 湯屋の二階 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それも偽者にせものでないことだ。非凡、恬淡てんたんの士は、何も天下とまでいわなくても、織田家にだけでもすくなくないが、すぐげやすい君子ばかりだから、使うとなっては、その使う道に困る。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「な、な、なにを、いッてやがるんだ。笑わかすな、この偽者にせものめ」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「孫乾が来るわけはない。偽者にせものだろう」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
偽者にせもの
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
偽者にせものか。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)