假寢うたゝね)” の例文
新字:仮寝
トロリとした鶴見つるみ神奈川かながはぎて平沼ひらぬまめた。わづかの假寢うたゝねではあるが、それでも氣分きぶんがサツパリして多少いくら元氣げんきいたのでこりずまに義母おつかさん
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
寢不足にまけ、暑さにまけ、焦慮にまけて私は何時の間にか假寢うたゝねをしてゐたのだ。額にも、胸にも、背にも、腋の下にも、膝の裏にも、濃い油汗が氣味惡くにじみ出てゐた。
小さき影 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
翌曉あくるあさ小樽に着く迄は、腰下す席もない混雜で、私は一晩ひとばん車室の隅に立ち明した。小樽で下車して、姉の家で朝飯をしたゝめ、三時間許りも假寢うたゝねをしてからまた車中の人となつた。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
いと暑き日の午後ひるすぎ、われは共同の廣間に出でしに、緑なる蔓草の纏ひ付きたる窓櫺さうれいの下に、姫の假寢うたゝねし給へるに會ひぬ。纖手せんしゆもてを支へて眠りたるさま、只だたはぶれに目を閉ぢたるやうに見えたり。
女中が物音に假寢うたゝねから起き上つて睡さうな眼をしながら食堂に出て來た。
小さき影 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)