倭寇わこう)” の例文
倭寇わこう八幡船ばはんせん胡蝶軍こちょうぐん、名こそ様々に呼ばれてはおれ、支那シナ高麗こうらいに押し寄せて、武威を揮う大船隊、その船隊の頭領として
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
樋口家の先祖は、広く倭寇わこうと云われている海賊の一類であった。大陸の海辺かいへんかすめた財宝をおびただしく所有していた。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼の物語を綜合して考えると、彼は倭寇わこう鎮撫を依頼する明朝の国使にしたがって、日本へ渡来したのである。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ところが嘉靖かせい年間に倭寇わこうに荒されて、大富豪だけに孫氏は種〻の点で損害をこうむって、次第〻〻に家運が傾いた。で、蓄えていたところの珍貴な品〻を段〻と手放すようになった。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
倭寇わこうは我我日本人も優に列強に伍するに足る能力のあることを示したものである。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そして、この半島出兵は、結局失敗に終つたが、当時の日本は、民族的にも国家的にも、このくらゐエネルギーが横溢してゐて、倭寇わこう以来の大陸進出の風潮が、国家的に発現したのだ。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
私の国では、あなたの国の人を、倭奴わどだの、東洋鬼トンヤンキだのと、恐れていますが、それは南の海岸や、揚子江を溯って来る、あの倭寇わこうばかり見て、それが日本人だと思いこんでいるからでしょう。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仮名書きの金石文にあらわれた倭寇わこう史料や同じ書体で記されたいわゆる琉球最後の碑文にあらわれたる内裏言葉は(一は既に早く同じ人によって紹介されたものではあるが)古雅きくするに足る。
ただし『五雑俎』に明の名将威継光が数百の猴に鉄砲を打たせて倭寇わこうほろぼしたとか、三輪環君の『伝説の朝鮮』一七六頁が、楊鎬が猿の騎兵で日本勢を全敗せしめたなど見ゆるは全くの小説だ。
最初にまず西表いりおもてという現在の島の名だが、もとは普通に古見の西表、すなわち古見という島の西の船着きを意味しており、そこの開発もかなり古く、多分はいわゆる倭寇わこう時代の船の来往によって
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
倭寇わこうは我我日本人も優に列強にするに足る能力のあることを示したものである。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
足利時代の当初から壱岐いき対馬つしま、九州の北部を根拠として、支那や朝鮮の沿海で、半貿易半海賊の活躍を始めたのであるが、倭寇わこうと呼ばれる頃には、かなり大がかりなものとなつたのである。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)