ぞろ)” の例文
夜着よぎ引きかぶればあり/\と浮ぶおたつの姿、首さしいだしてをひらけば花漬、とずればおもかげ、これはどうじゃとあきれてまたぞろ眼をあけば花漬
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼は此態を見て居て又ぞろ不安を感じ出して來た。屹度俺の來るまでは二人で何か——俺の事を話して居たに違ひない。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
つけたのだったろう。すんだことだから、それはそれでいいが、公家では、またぞろ、そのでんを蒸しかえそうとしている。おぬしらは、この二月に州崎の浜へ流れついた漂民の話を聞いたろう
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
南洲翁の大きかつた事を今になつて吃驚びつくりするやうでは、いつ吃驚びつくりせずに死んだ方がましだ。何故といふに、そんな人は明日あすになつたら、またぞろ自分の下らぬ事に吃驚びつくりするかも知れないから。